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自分を理解するとともに、周囲に理解してもらえる環境で安定した就労・生活を送りたい

障害名  :うつ病・自閉症スペクトラム症
年齢   :40代
通所期間 :1年間
就職先業種:建築・設備の一般事務職
【通所開始から就労までの簡単な流れ】
◆週3日から通所開始
◆3ヶ月目から週4日、週5日と通所日数を増やす
◆8ヶ月目から就職活動を開始

通所するまでの困り事

幼少期から忘れ物が多く、また環境の変化に弱く腹痛や発汗、赤面の症状があったが、失敗を生かして自分なりの工夫で乗り越えてきました。普通に大学まで過ごし、大学卒業後に上京し就職をしました。職場の上司から暴言(パワハラ行為)が度々あり、精神的に負荷が強くかかってしまったことでうつ病と診断を受け、休職をすることになりました。その後復帰することができず退職となったのですが、振り返って考えてみると、上司との関係性構築にも難しさを感じていたと思います。
当時、働いていた職場は通勤に車で2時間半以上かかっていることもありましたが、社会人では当たり前と捉えており、その時には気づけず、日々の中で無理を重ねていたんだと後で知りました。離職後は日常生活を送ることも難しく、1日を寝て過ごす期間もありました。また結婚し家庭をもったが、うまくいかないことがありました。

通所を決めた理由

就職活動を進める中で、ハローワークで自分が就労支援の福祉サービスを利用できることを知り、就労移行支援事業所を利用することを考えました。いくつかの事業所で見学や体験を行い、体験の時にグループワークを希望して何度か実施してもらい、また親身に話を聞いてくれ、良いことも悪いことも自分の為に必要なことはきちんと伝えてくれる姿に信頼感を抱き、利用することを決めました。

通所して学んだ事

通所前は外に出ることも少なくなっていたため、事業所の通所は週3日から始めました。通所当初は自転車で体力作りも兼ねて通所しており、体力が付いてきた頃から週4日、週5日と通所日数を延ばしていきました。通所を決めた後も、面談で、自分の意見や考えについてまとめてくださったり今後の予定について共有しながら進められ、これから何をするかに集中して取り組めたことで安心して通い続けることができました。

通所してすぐの段階から「セルフモニタリング」の時間を1日1回作るようにし、その場その場で起きた感情について振り返る時間を取り入れるよう助言を受けました。作業を通して何に対してどのような感情が発生したのか、どの場面で疲労を溜めやすいのかなどを次第に理解できるようになり、それを支援員に話をすることで自分の中にあったモヤモヤを減らすことができるようになりました。自分の考えを誰かに伝えることが不安解消に繋がっていることも、面談の中で改めて気付くことができました。

また、自分の中では当たり前と思ってやっていたことも、支援員の意見を受けて、心身ともに負担がかかる程に頑張っていたことだったんだと自覚するきっかけを貰いました。頑張りすぎていたと認識したことと、セルフモニタリングで自分の疲労度などを把握できるようになってきたことで、日々の過ごし方について意識しながら安定した体調で過ごせるようになりました。

他に、担当支援員だけでなく他の支援員と会話するとともに、グループワークへの参加を希望しコミュニケーションを中心にトレーニングを重ねました。これまで自立支援医療は受けてきましたが、障がい者手帳は取得していませんでした。事業所を本格的に利用してから人の平均よりもIQが高いことがわかり、セカンドオピニオンの医療機関でもASD(自閉症スペクトラム症・発達障がい)があるかもしれないことを知り、手帳の取得を検討するようになりました。手帳取得のメリット・デメリットも踏まえて、支援員とも相談を重ねた結果、手帳取得の申請をすることにしました。
手帳取得前は一般の求人のみで検討していましたが、取得後は一般の求人以外の障がい者求人も検討できるようになりました。選択肢の幅が広がるとともに、自分のことを理解してもらいやすい環境で働けることを重視して求人を探すようになりました。

どのように就職活動に取り組んだのか

もともと経験のある職種で働きたい想いと、障がい特性を開示して理解していただける職場で働きたいという気持ちがあり、どのように自分をアピールするかを主とした就職活動支援を受けました。緊張しやすいので、何回も面接練習や履歴書添削をしていただき、自分の言葉で伝えられるように準備をしていきました。
一番大変だったのは、「自分の経歴や実績をどのように伝えるれば良いのか」ということでした。文字数制限で入りきらない想いや実績をどこまで入れて書類選考を突破するか、面接の場面で何を話すかなどを支援員との面談や面接練習で繰り返し練習して準備をしました。本番になると緊張度が増してしまい、後から「こうすれば良かった」と感じることも少なくありませんでした。しかし、その度に支援員が話を聞いて助言をしてくださったり、良かった点を評価していただけたので、落ち込むことがあってもすぐに気持ちを切り替えて取り組むことができました。
障がい者雇用の求人を支援員と確認する中で、実習を受けてから面接等に臨めるものを見つけ、その会社で見事採用をいただきました。実習をすることで職場の雰囲気を肌で感じることができ、この職場であれば働けそうだという実感を得て入社をすることができました。

就職後の心境

今は週4日、計31時間の勤務をしています。職場内で自分の特性を誰にどの程度まで伝えるかを迷い考え、支援員や上司に相談しました。定期的に電話やメールで支援員へ連絡し、気になったことや困ったことを共有しました。上司とは支援員同席の元で月1回の面談の場を設けてもらい、気になったことや困ったことを上司に伝えることができ、入社後の緊張や不安を早い段階で解消することができました。面談では上司からフィードバックをいただくことで現状や課題、改善点を把握しモチベーションを保つようにしました。
人事異動で上司や先輩が変わったりして環境の変化もありましたが、現在の上司にも自分の特性を伝えるとともに都度仕事の進捗状況や優先順位などを報告や相談しながら業務に取り組んでいます。なにかあれば上司だけでなく支援員や事業所などへ相談できる環境を作ることで安心して働いています。

支援員のコメント

利用前は体調を整えることも大変で、「仕事をしていた頃に戻れるのか」と不安が強くあった方でしたが、持ち前の努力を続けられる力と心理的安全性の高い環境で少しずつ挑戦していくことで自分らしさを取り戻した方でもあります。うまくいかないことがあっても気持ちを切り替え、何事にも挑戦していったからこそ、現在の就労を続けている姿があると感じています。

長く働き続けるためには、「自分の強みや魅力」を改めて見つめていくとともに、「心身の調子が下がる前に、何をすれば回復するか」を理解しておくことが何よりも大切です。就職は人生において大きな役割を担う箇所でもあり、良いこともそうでないことも起こることを想定して、自分の生活を過ごしていくことが重要となります。

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