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自身にあった環境で働く事の大切さ

障害名  :自閉スペクトラム症
年齢   :20代
通所期間 :9ヶ月
就職先業種:自動車部品の開発・設計・製造
【通所開始から就労までの簡単な流れ】
◆週4日から通所開始
◆6ヶ月目から週5日通所へ
◆7ヶ月目から就職活動を開始

通所するまでの困り事

学生時代から他者とのコミュニケーションに苦手意識を感じていました。他者の話のテンポが早く感じすぐに返答が出来ないという困り事があり、次第に他者とコミュニケーションを取ることが怖くなりました。恐怖心があるからより話せなくなり悪循環に陥っていたと今では感じます。また、文章から気持ちや背景を読み取ることや計算問題も苦手意識を感じており、勉強についていくのもやっとな状況でした。高校卒業時に就職活動をしましたが、面接官からの質問に何も答えられなくなったことをきっかけに自宅で過ごすようになりました。

通所を決めた理由

このままではいけないという気持ちで企業見学に行った先で就労移行支援事業所という福祉サービスを紹介してもらったことがきっかけです。実際に見学に行った際に、自分ひとりでは出来ないことも通所することで可能になるかもしれないという思いで通所を決めました。体験利用でもしっかりと話しを聞いてもらえる環境が整っていると感じました。

通所して学んだ事

金銭的な余裕がなかったため通所開始時は週4日の通所から始めました。これまで人と接することに恐怖心を感じていましたが、担当してくれたコーチが根気強く話をしてくれたおかげで、これまで感じていた他者との関わりも悪いものではないのかなという実感を得ることが出来ました。その中でも「自分の気持ちや考えを相手に伝えたり相談する」ことがなかなか出来ずにいましたが、声をかけるタイミングや声掛けの例文を持ち歩くことで、話しかけるきっかけ作りに繋がり少しずつ自分から行動できるようになった点はすごいうれしかったです。

同時にPCスキルの訓練も行いました。その中で特に役に立ったことは「PC入力訓練」でした。キーボード入力はまったくやったことはなかったのですが、9か月間毎日続けたことでブラインドタッチも出来るようになり、今の仕事でも大変役になっているスキルのひとつです。

市からの交通費の助成が認められた6カ月目からは週5日の通所を開始し本格的に生活リズムを整えることを頑張りました。これまでは通所の時間に合わせた生活リズムだったものを、通勤時間を1時間、始業時間を9時に設定し、就労後の生活リズムを意識し行動していきました。実際に就労したときに一緒に生活リズムを変えないといけない大変さを回避できたことはとても良かったと思います。

また、嫌なことがあると感情があふれ出てしまうまで自身の中で溜めこんでしまう傾向がありました。日々、いかに気持ちを安定させるのかということを重点に、通所前の時間に紙に感情を書き出す「エクスプレッシブ・ライティング」や、就寝前の「マインドフルネス瞑想」を習慣化していきました。日々、吐き出せたり今の自分に着目する時間を作ったことで徐々に感情が溢れ出ることが減っていったことが効果として出ました。

どのように就職活動に取り組んだのか

まずはどういった環境で働く事が自分には「長く働く」ことに繋がるかどうかを支援員と相談しながら進めていきました。働くことも初めてだったため、まずはどういった職場環境があるのかを知るということから、「障害者雇用のサテライトオフィス」「特例子会社」「一般企業」の企業見学から行いました。その中で支援を受けながら働きたいという思いがあり、そういった環境が整っている企業を中心に応募をしていきました。そこからは志望動機や自己PRなど面接対策を進めていきましたが、過去に面接の場において何も答えられなかったという経験があり、果たして自分は就職できるのかという恐怖心がありました。その中で担当の支援員から、先方には何を伝えるべきかを面談形式でひとつひとつ掘り下げてもらい面接の準備を進めてきました。実際に選考においては「企業見学」→「職場体験」→「面接」という形で進み支援員の助けもあり内定をもらうことができました。一連の経験により大きな自信につながりました。

就職後の心境

週5日1日6時間勤務から開始しました。これまで働いた経験がなかったので体力的に慣れるまで時間がかかりましたが、職場には常に企業支援員が配属されており、外部からはこれまで関わってもらった支援員のサポートも継続して受けられていたため、自然と仕事を続けられるのかという不安は感じませんでした。お金を稼ぐことができたことで両親にも親孝行ができ、これまでの自分からは想像できない状況に立つこともできました。今後は、1日の勤務時間を8時間に延ばせるよう精一杯取り組んでいきたいと思います。

支援員のコメント

他者との関わりの中で過去の経験が大きく影響し、うまく接することが難しいと感じている方は多くみられます。この方も同様で過去の経験により生きづらさを感じている方でした。しかし、素直さという武器がありアドバイスを受けた際は、何とか出来るようになりたいという気持ちで常に行動出来る方でもありました。何事にも一生懸命に取り組み対象者の努力があったからこそ就職に結びついたと感じています。「どのように伝えるべきか」「伝えられなかったときにいかに自分の安定を保つのか」という視点が大切になってきます。就職を目指すうえで必要な業務スキルを身に付けることも大切ですが、こういったメンタルの安定を図る方法も同様に大切です。総合的に整え就労を目指すことで「長く安定して働く」ということに繋がります。引き続き、就労後も無期限の支援を提供していきます。

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